30秒まとめ

  • 遺言書は主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類
  • 確実に遺言を実現するなら公正証書遺言が最も安全
  • 自筆証書遺言は法務局保管制度を使えば検認不要に

1遺言書とは?作成する目的とメリット

遺言書とは、自分の財産を死後にどのように分配するかを書面で指定するものです。遺言書がない場合、遺産は法定相続分に従って分割されますが、遺言書があれば自分の意思を反映した財産分配が可能になります。


遺言書を作成するメリット

  • 相続トラブルを予防できる(遺産分割協議が不要に)
  • 特定の人に多く渡したい場合に意思を反映できる
  • 法定相続人以外にも財産を渡せる(内縁の配偶者、孫など)
  • 事業承継をスムーズに行える
  • 相続手続きの負担を軽減できる

2遺言書の3つの種類|それぞれの特徴と比較

遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれの特徴を比較します。

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 自分で全文を手書き 公証人が作成 自分で作成し公証役場で封印
費用 無料 数万円〜 11,000円
証人 不要 2人必要 2人必要
検認 必要(※法務局保管制度利用時は不要) 不要 必要
無効リスク 高い(形式不備で無効になりやすい) 極めて低い 中程度
秘密性 高い 低い(証人に内容を知られる) 高い(内容は非公開)

実務上は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がほとんどで、秘密証書遺言はあまり利用されていません。

3自筆証書遺言の書き方と注意点

自筆証書遺言は、費用をかけずに自分で作成できる最も手軽な遺言書です。ただし、厳格な形式要件が定められており、要件を満たさないと無効になります。

自筆証書遺言の要件


有効な自筆証書遺言の要件

  • 全文を自筆で書く(パソコン・代筆は不可。ただし財産目録はパソコン可)
  • 日付を正確に記載する(「令和○年○月○日」。「○月吉日」は無効)
  • 氏名を自筆で記載する
  • 押印する(認印でも可。実印が望ましい)


自筆証書遺言でよくある無効パターン

  • 日付が不正確:「令和6年3月吉日」→ 無効
  • パソコンで本文を作成:財産目録以外はすべて手書きが必要
  • 押印がない:署名だけでは不十分
  • 共同遺言:夫婦で1通の遺言書を作成 → 無効
  • 訂正方法の不備:二重線で消しただけでは正式な訂正にならない

自筆証書遺言保管制度(法務局保管)

2020年7月から開始された制度で、自筆証書遺言を法務局に預けることができます。


法務局保管制度のメリット

  • 検認が不要になる(通常の自筆証書遺言は検認が必要)
  • 紛失・改ざんのリスクがなくなる
  • 形式的なチェックを受けられる(ただし内容の有効性は保証されない)
  • 保管手数料は3,900円と低額

4公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言は、公証人が作成するため無効になるリスクが極めて低く、最も安全な遺言書です。弁護士が推奨する方法です。

STEP 1

遺言の内容を決める

誰に、何を、どのように渡すかを決めます。弁護士に相談して内容を整理するのが望ましいです。

STEP 2

必要書類を準備する

戸籍謄本、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、預金通帳のコピーなどを用意します。

STEP 3

公証役場に連絡・事前打ち合わせ

公証人と遺言の内容について打ち合わせを行います。弁護士が代理で対応することも可能です。

STEP 4

証人2人を手配する

相続人やその配偶者・直系血族、未成年者は証人になれません。弁護士や公証役場で手配することが可能です。

STEP 5

公証役場で遺言書を作成する

公証人が遺言者の口述をもとに遺言書を作成し、遺言者・証人が署名押印します。原本は公証役場に保管されます。

本人が高齢や体調が悪いなどの理由で公証役場に直接行くことが難しい場合には、公証人が自宅や病院等に出張してもらうことも可能です。

公証役場での公正証書作成当日は、公証人がご本人に対して、住所・氏名・生年月日やどのような遺言書を作成したいかなどを口頭で確認して、ご本人が遺言書を作成するだけの判断能力(遺言能力)が十分かを確認します。認知症等の診断がある場合には、医師の診断書の提出を求められる場合もあります。

公正証書遺言の費用

遺産の価額 公証人手数料
100万円以下 5,000円
100万円超〜200万円以下 7,000円
200万円超〜500万円以下 11,000円
500万円超〜1,000万円以下 17,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 23,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 29,000円
5,000万円超〜1億円以下 43,000円

※上記は受遺者1人あたりの手数料です。遺産総額が1億円以下の場合は、別途11,000円が加算されます。

5自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶべきか


自筆証書遺言が向いているケース

  • 財産が少なく、分配方法がシンプルな場合
  • 費用をかけたくない場合
  • すぐに遺言書を作成したい場合
  • 法務局保管制度を利用する場合


公正証書遺言が向いているケース(推奨)

  • 不動産や事業用資産など高額な財産がある場合
  • 相続人間でトラブルが予想される場合
  • 確実に遺言を実現したい場合
  • 相続人以外に財産を渡したい場合
  • 遺言の無効リスクを避けたい場合

6よくある質問

遺言書はいつ作るべき?

早ければ早いほどよいです。特に事業経営者、再婚家庭、相続人間の仲が悪い場合は、元気なうちに作成することを強くおすすめします。遺言書はいつでも撤回・変更できます。

遺言書を見つけたらどうする?

自筆証書遺言(法務局保管でないもの)は、開封せずに家庭裁判所に検認を申し立ててください。勝手に開封すると5万円以下の過料に処せられることがあります。公正証書遺言は検認不要です。

遺言で全財産を一人に渡せる?

遺言で指定すること自体は可能ですが、配偶者や子どもには「遺留分」が保障されています。遺留分を侵害する遺言は、遺留分権利者から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

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7遺言書を作成する際の注意点

①遺留分に配慮する

遺言で「すべての財産を長男に相続させる」と書いても、他の相続人には「遺留分」(法律で保障された最低限の取り分)があります。遺留分を侵害する遺言は有効ですが、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。

②付言事項を活用する

付言事項とは、法的効力はないものの、遺言者の想いや理由を伝える文章です。「なぜこのような分配にしたのか」を書いておくことで、相続人の理解を得やすくなり、トラブル防止に役立ちます。

③遺言執行者を指定する

遺言の内容を実現するために、遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。弁護士を遺言執行者に指定すれば、相続手続きがスムーズに進みます。

④定期的に見直す

家族構成や財産状況の変化に合わせて、遺言書を定期的に見直すことが大切です。新しい遺言書を作成すれば、古い遺言書は自動的に撤回されます。

⑤もしご本人が認知等の場合には判断能力(遺言能力)の確認も

ご本人が亡くなられた後、関係者から「遺言書を作成した当時、遺言者は認知症が進行していたから遺言書を作成するだけの判断能力はなかった。」と遺言書の有効性を争われる場合があります。

そのためご本人が認知症等の場合には判断能力が十分かどうか注意が必要です。場合によっては医師の診断書を取得しておくことで、後に遺言能力を争われたときの反論もしやすくなります。

なお、公正証書遺言の場合は、公証人が直接、ご本人の意思確認や判断能力が十分かの確認を行いますので、後に遺言書が無効だったと争われにくくなります。

8まとめ


この記事のまとめ

  • 遺言書は主に自筆証書遺言公正証書遺言の2種類
  • 自筆証書遺言は手軽だが形式不備で無効になるリスクが高い
  • 公正証書遺言は費用がかかるが無効リスクが極めて低い
  • 自筆証書遺言は法務局保管制度を利用すると検認不要
  • 遺言書作成時は遺留分への配慮遺言執行者の指定が重要
  • 確実に遺言を実現するなら公正証書遺言+弁護士サポートが最善

遺言書は、残された家族が争うことなく円満に相続を進めるための大切な準備です。どの形式で作成すべきか、内容についてお悩みの方は、弁護士にご相談ください。