30秒まとめ
- 相続手続きには相続放棄3ヶ月・相続税10ヶ月・相続登記3年の期限がある
- 相続人と相続分は民法で明確に定められている(法定相続)
- 遺言書があれば法定相続に優先するが、遺留分には注意が必要
1遺言・相続とは
相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産や権利義務を、法律で定められた相続人が引き継ぐことです。財産にはプラスの財産(預貯金、不動産、株式等)だけでなく、マイナスの財産(借金、債務等)も含まれます。
相続は「争族」とも呼ばれるほど、家族間のトラブルに発展しやすい問題です。遺言書の作成や生前の対策(家族信託など)を行うことで、相続トラブルを未然に防ぐことが可能です。
2法定相続人と法定相続分
配偶者は常に相続人となります。配偶者以外の相続人の順位は以下の表のとおりです。
| 相続順位 | 相続人 | 配偶者の相続分 | 他の相続人の相続分 |
|---|---|---|---|
| 第1順位 | 子ども | 1/2 | 子ども全員で1/2 |
| 第2順位 | 親(直系尊属) | 2/3 | 親全員で1/3 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 3/4 | 兄弟姉妹全員で1/4 |
配偶者は常に相続人となります。他の相続人は上位順位の人がいない場合にのみ相続人となります。
3相続手続きの期限
必ず守るべき期限
- 3ヶ月以内:相続放棄・限定承認の申述(家庭裁判所)
- 4ヶ月以内:被相続人の準確定申告(税務署)
- 10ヶ月以内:相続税の申告・納付(税務署)
- 3年以内:相続登記(2024年4月義務化、法務局)
4遺言書の種類と効力
遺言書の種類
- 自筆証書遺言:全文を自分で手書き。費用がかからないが、形式不備で無効になるリスクあり。自宅で保管する場合、紛失や利害関係人による改ざん等のリスクもあり。ただし、令和2年7月から自筆証書遺言を法務局で保管してくれる自筆証書遺言保管制度あり。
- 公正証書遺言:公証役場で公証人が作成。最も確実で安全な方法。公証人が本人に直接、意思確認を行う(認知症等の疑いがある場合には診断書等の提出を求められることも)。公正証書遺言の検索システムあり(対象は平成元年以降に作成されたもの)。
- 秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま公証人に存在を証明してもらう。実務ではほとんど使われない
遺言書は法定相続に優先します。ただし、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(最低限保障される取り分)があるため、完全に自由に分配できるわけではありません。
5相続放棄の手続き
被相続人に多額の負債や処分が困難な遺産がある場合等には、相続放棄を検討することになります。相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から」3か月以内(熟慮期間)であれば、家庭裁判所に申述することで相続放棄が可能です。
3か月の熟慮期間だけでは、相続財産にどのようなものがあるかどうか分からず、相続放棄の判断ができない場合もあります。その場合、家庭裁判所に申し立てをすることで、熟慮期間を延長することができます。
延長申請をせずに3か月の熟慮期間が経過した後に、実は被相続人に多額の負債があったと判明するケースもあります。そのような場合、例外的に熟慮期間が経過しても相続放棄が認められるケースもあります。
6相続手続きの大まかな流れ
被相続人が亡くなった場合、その遺産をどのように分けることになるのか、手続きの大まかな流れをご説明します。
①遺言書がないかの調査
自筆証書遺言→自宅、法務局(自筆証書遺言保管制度)等
公正証書→公証役場
②相続人の範囲を調査
被相続人の出生から死亡までの全戸籍と相続人全員の戸籍を収集して、相続人の範囲を確定します。その調査の中で、実は被相続人に婚外子がいたということが発覚する場合もあります。
③相続財産を調査
マイナスの財産(借金等)も含めて調査することになります。
例えば、不動産については、区市町村役場で被相続人の名寄帳を取得することで、被相続人がその自治体内で所有していた不動産(土地・建物)を一覧できます。ただし、別の区市町村内の不動産は分からないため、複数の区市町村にまたがって不動産を所有している場合には注意が必要です。
預貯金について、全国の金融機関に被相続人の口座があるか一括で調べる制度は現在ありません。そのため遺品の通帳等からある程度、この銀行に口座があるのではないかと予想を立てながら各金融機関に照会する必要があります。
遺産に漏れがあると後々再度、相続の紛争が再燃する危険がありますので、できるだけ漏れがないように調査する必要があります。被相続人に複数の財産がある場合には、司法書士や弁護士への相談・依頼をおすすめします。
④遺産分割協議
遺言書がある場合には、遺言書どおりに遺産を分割していくことになります。
遺言書がない場合、または遺言書があっても遺言書がすべての遺産をカバーできていない場合などには、相続人全員で話し合いでどのように遺産を分けるか協議することになります(遺産分割協議)。その際、法定相続分を基準に協議を進めていくことになります。
相続トラブルで最も多いのがこの遺産分割の争いです。特に、不動産が遺産の大部分を占める場合や、相続人の一人が被相続人と同居していた場合に話し合いがまとまらず紛争が起きやすくなります。話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。
遺言・相続の詳しい解説記事
7よくある質問
相続税がかかるのはいくらから?
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。例えば相続人が配偶者と子ども2人なら4,800万円まで非課税です。これを超える場合に相続税の申告が必要になります。
遺言書がない場合はどうなる?
遺言書がない場合は、法定相続分に基づいて相続人全員で遺産分割協議を行います。全員の合意が必要なため、一人でも反対すると協議がまとまりません。その場合は家庭裁判所の調停・審判を利用します。
相続人同士で揉めたらどうする?
まず弁護士に相談し、法的な権利関係を整理することをおすすめします。直接の話し合いが難しければ、弁護士を代理人として交渉するか、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てます。