30秒まとめ

  • 相続手続きは相続放棄3ヶ月・相続税申告10ヶ月等の期限がある
  • まず遺言書の有無確認→相続人調査→財産調査の順で進める
  • 2024年4月から相続登記が義務化(3年以内・違反は過料10万円)

1相続手続きは「期限」との戦い

大切な人を亡くした悲しみの中で、様々な手続きを進めなければならないのは、精神的にも肉体的にも大きな負担です。しかし、相続手続きには法律で定められた期限があり、これを過ぎると取り返しのつかない事態になることもあります。


特に注意すべき期限

  • 相続放棄:相続開始を知った日から3ヶ月以内
  • 準確定申告:相続開始を知った日から4ヶ月以内
  • 相続税の申告・納付:相続開始を知った日から10ヶ月以内

これらの期限を過ぎると、相続放棄ができなくなったり、税金の延滞税が発生したりします。早めに全体像を把握し、計画的に進めることが重要です。

2相続手続きの全体像(タイムライン)

相続手続きの流れを時系列で整理すると、以下のようになります。

期限 手続き 届出先
7日以内 死亡届の提出 市区町村役場
14日以内 年金受給停止届、介護保険資格喪失届 年金事務所、市区町村
3ヶ月以内 相続放棄・限定承認 家庭裁判所
4ヶ月以内 準確定申告 税務署
10ヶ月以内 相続税の申告・納付 税務署
期限なし(早めに) 遺産分割協議、名義変更 相続人間、各機関

死亡後すぐ

死亡届の提出、葬儀の手配

死亡診断書をもらい、7日以内に死亡届を提出。火葬許可証を取得して葬儀を行います。

〜2週間

各種届出、保険・年金の手続き

年金受給停止届、健康保険・介護保険の資格喪失届などを提出します。

〜3ヶ月

相続人調査、財産調査、相続放棄の判断

戸籍を集めて相続人を確定し、財産と負債を調査。借金が多い場合は相続放棄を検討します。

〜4ヶ月

準確定申告

亡くなった方に確定申告の義務があった場合、相続人が代わりに申告します。

〜10ヶ月

遺産分割協議、相続税申告・納付

相続人全員で遺産の分け方を決め、相続税の申告と納付を行います。

遺産分割後

名義変更手続き

不動産、預貯金、株式、車などの名義を変更します。

3まずやるべきこと① 相続人を確定する

相続手続きを進めるには、まず「誰が相続人なのか」を確定させる必要があります。相続人を確定しないと、遺産分割協議も、相続税申告もできません。

法定相続人とは

法律で定められた相続人を「法定相続人」といいます。相続順位は以下の通りです。


法定相続人の順位

  • 配偶者:常に相続人になる
  • 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫)
  • 第2順位:父母(父母が亡くなっている場合は祖父母)
  • 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥姪)

例えば、亡くなった方に配偶者と子どもがいる場合、配偶者と子どもが相続人になります。子どもがいない場合は、配偶者と父母(または兄弟姉妹)が相続人になります。

戸籍謄本の収集方法

相続人を確定するには、亡くなった方の「出生から死亡までのすべての戸籍」を集める必要があります。これにより、認知した子どもや、離婚歴の有無なども判明します。

  • 亡くなった方の本籍地の市区町村役場で請求
  • 転籍している場合は、以前の本籍地でも取得が必要
  • 郵送でも請求可能(手数料は定額小為替で納付)
  • 相続人であることを証明する書類が必要


法定相続情報証明制度

戸籍を何度も提出する手間を省くため、法務局で「法定相続情報一覧図」を作成してもらう制度があります。一度作成すれば、金融機関や法務局での手続きに繰り返し使えて便利です。

4まずやるべきこと② 遺言書の有無を確認する

相続手続きの進め方は、遺言書があるかどうかで大きく変わります。遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従って遺産を分けることになります。

遺言書の探し方

  • 自宅の探索:金庫、仏壇、机の引き出し、貸金庫など
  • 公証役場での検索:公正証書遺言は全国の公証役場で検索可能
  • 法務局での確認:自筆証書遺言保管制度を利用している場合
  • 弁護士への確認:生前に弁護士に遺言書を預けている場合

遺言書があった場合の対応


自筆証書遺言を見つけたら

自筆証書遺言(手書きの遺言書)を見つけた場合、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で「検認」という手続きを行う必要があります。開封すると5万円以下の過料が科される可能性があります。

公正証書遺言の場合は検認不要で、すぐに内容を確認できます。遺言書の内容に不満がある場合でも、「遺留分」という最低限の取り分は法律で保障されています。

5まずやるべきこと③ 相続財産を調査する

相続財産には「プラスの財産」と「マイナスの財産(負債)」があります。特にマイナスの財産がプラスの財産を上回る場合は、相続放棄を検討する必要があります。

プラスの財産(例)

  • 預貯金:銀行、ゆうちょ、信用金庫など
  • 不動産:土地、建物、マンション
  • 有価証券:株式、投資信託、国債
  • 保険金:死亡保険金(受取人指定あり)
  • 車両:自動車、バイク
  • 貴金属・美術品:価値のある動産
  • その他:ゴルフ会員権、貸付金など

マイナスの財産(負債)

  • 借金:銀行ローン、消費者金融
  • 住宅ローン:残債の有無を確認
  • 未払金:税金、医療費、クレジットカード
  • 保証債務:他人の借金の保証人になっている場合

財産調査の方法


財産調査で確認すべき書類・場所

  • 預金通帳、キャッシュカード
  • 固定資産税の納税通知書(不動産の把握)
  • 証券会社からの郵便物
  • 信用情報機関への照会(借金の調査)
  • 確定申告書の控え

6相続放棄を検討すべきケース

相続放棄とは、相続人としての地位を放棄し、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことです。

相続放棄を検討すべき場合

  • 借金がプラスの財産を上回っている
  • 負債の全容が把握できない(保証債務など)
  • 相続トラブルに巻き込まれたくない
  • 特定の相続人に財産を集中させたい


相続放棄の期限は3ヶ月

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。期限を過ぎると、原則として相続放棄はできなくなります。

相続放棄の注意点

  • 一度放棄すると撤回できない
  • プラスの財産も受け取れなくなる
  • 相続財産を処分すると放棄できなくなる場合がある
  • 次の順位の相続人に相続権が移る

7遺産分割協議の進め方

相続人が複数いる場合、誰がどの財産を相続するかを話し合いで決める必要があります。これを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議のポイント

  • 相続人全員の参加が必須:1人でも欠けると無効
  • 遺産分割協議書を作成:合意内容を書面に残す
  • 全員の署名・押印(実印)が必要
  • 印鑑証明書を添付

遺産の分け方


遺産分割の方法

  • 現物分割:「この土地は長男、この預金は次男」のように分ける
  • 代償分割:1人が不動産を取得し、他の相続人に金銭を支払う
  • 換価分割:財産を売却して、その代金を分ける
  • 共有分割:財産を共有名義にする(後のトラブルの原因になりやすい)

話し合いがまとまらない場合

遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。調停でも解決しない場合は「遺産分割審判」に移行し、裁判官が分け方を決定します。

8弁護士に相談すべきケース

相続手続きは自分で進めることもできますが、以下のようなケースでは弁護士に相談することをおすすめします

  • 相続人間で揉めている・揉めそう
  • 遺言書の内容に不満がある(遺留分侵害)
  • 相続財産が複雑(不動産、会社株式など)
  • 相続放棄を検討している(期限が迫っている)
  • 借金や保証債務があるかもしれない
  • 遺産分割協議書の作成方法がわからない
  • 相続人の中に連絡が取れない人がいる
  • 相続人の中に認知症の方がいる


弁護士に依頼するメリット

  • 戸籍収集や財産調査を代行してもらえる
  • 他の相続人との交渉を任せられる
  • 遺産分割協議書を法的に有効な形で作成してもらえる
  • 調停・審判になった場合も対応できる

9よくある質問

相続手続きは自分でもできる?

比較的単純な相続(相続人が少ない、財産が預貯金のみ等)であれば自分で行うことも可能です。ただし、不動産がある場合や相続人間で争いがある場合は専門家への依頼をおすすめします。

相続手続きの期限を過ぎたらどうなる?

相続放棄は3ヶ月の期限を過ぎると原則できなくなります。相続税申告は10ヶ月を過ぎると延滞税や加算税が発生します。相続登記は2024年4月から3年以内が義務で、違反は10万円以下の過料です。

被相続人に借金があるか分からない場合は?

信用情報機関(CIC、JICC、全銀協)に開示請求することで、借金の有無を調査できます。調査に時間がかかる場合は、家庭裁判所に相続放棄の期間伸長を申し立てることも可能です。

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10まとめ

相続手続きは、期限があるものが多く、やるべきことも多岐にわたります。全体像を把握し、優先順位をつけて計画的に進めることが大切です。


相続手続きのポイント

  • 期限を確認:相続放棄3ヶ月、準確定申告4ヶ月、相続税申告10ヶ月
  • 相続人を確定:戸籍を集めて法定相続人を把握
  • 遺言書を確認:自筆証書遺言は検認が必要
  • 財産を調査:プラスの財産とマイナスの財産を把握
  • 遺産分割協議:相続人全員で話し合い、協議書を作成

大切な方を亡くされた悲しみの中で手続きを進めるのは、本当に大変なことです。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることも検討してください

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