30秒まとめ
- いじめ発覚後は証拠の確保→学校への報告→教育委員会の順で対応
- 学校にはいじめ防止対策推進法による対応義務がある
- 学校が動かない場合は弁護士を通じて法的対応も検討
1いじめに気づいたときの初動対応【5つのステップ】
子どもがいじめを受けていることに気づいたとき、最初に重要なのは、今後の対応を見据えながら事実関係を把握し、場当たり的で拙速な対応を避けることです。
親として強い怒りや不安を感じるのは自然ですが、初動での対応を誤ると、学校との感情的対立を招いたり、加害側とのトラブルに発展したりして、かえって子どもの負担が増えることさえあります。
子どもから事情を把握する
まず、子どもから、何があったのかをできる限り具体的に確認します。確認の際には、子どもを問い詰めないようにしつつ、「いつ」・「どこで」・「誰から」・「何をされたのか」という基本情報を把握することを意識してください。
この段階では、評価や結論を急がずに、現在直面している状況を正確に知ることが重要です。親が先回りして解釈を加えてしまうと、学校も対応することが難しくなります。そのため、子ども自身が述べた内容と、親の推測とはしっかり区別し、子どもが体験した客観的な出来事を把握することが重要です。
事実を整理・記録する
次に、聴き取った内容を時系列で整理し、記録に残します。年表のように出来事を日付ごとに整理するとわかりやすくなります。パソコンでWordなどを使うのでも、メモ帳などに手書きするのでも問題ありません。
いじめ問題では、「何があったか」に加えて、「いつの時点で学校に何を伝えたか」「学校がどのような対応をしたか」というのも極めて重要になります。
記録には、少なくとも以下の事項を含めるとよいでしょう。
- 発生日時
- 場所
- 関与した児童生徒の氏名
- 具体的な言動や出来事
- 被害の内容
- 子どものその時の様子
- 学校に伝えた日時と内容
- 学校からの回答や説明
記録は、将来的に学校の対応が適切であるか検討する際にも、裁判などを見据える際にも、もっとも重要な基礎資料の1つになります。
証拠を確保する
いじめの相談では、親が「学校にまず連絡しなければ」と考えることが少なくありませんが、学校への連絡に先立って、又は少なくとも並行して、客観的資料を確保しておくことが重要です。
LINE、SNS、写真、録音、ノートへの記載、持ち物の破損状況、診断書など、後から消失・改変されうるものは、早めに保存しておく必要があります。
特に、デジタル上の証拠は、削除されると復元が難しい場合がありますので、スクリーンショット、日時、投稿者に関する情報なども含めて記録を残しておくのが望ましいです。
学校への連絡は、内容を整理して行う
事実関係と資料の整理ができたら、学校に連絡することを検討します。
ただし、ここで重要なのは、思いつきを感情のままに連絡しないことです。学校への連絡内容が曖昧であったり、感情的であったりすると、学校も事実関係を把握できず、対応をすることができません。親が伝えたつもりでも、学校に伝わっていないために学校が適切な対応を取れず、その結果として親と学校の感情的対立を生むことは珍しいことではありません。
学校への連絡にあたっては、次の点を意識してください。
- 現時点で把握している事実を整理して伝えること
- 学校に何を求めるのかを明確にすること
- 可能な限りメールや書面、録音など記録に残るようにすること
- 加害児童生徒やその保護者への早急な直接接触は、原則として避けること
いじめ防止対策推進法23条1項は、学校がいじめに係る相談や通報を受けたときには、事実関係の確認等を行うべきことを定めています。親としては、学校に対し、法に基づく対応を求めるという意識をもつことが重要です。
学校との対応やりとりの経過を記録し続ける
学校に連絡した後は、やり取りの経過を継続的に記録してください。
いじめ問題では、当初は「対応します」と言われても、その後の調査や情報共有が不十分なまま時間が経過する例が少なくありません。
そのため、
- 誰と話したか
- いつ話したか
- 学校が何をすると説明したか
- 実際に何が行われたか
- 次回連絡の予定はどうなっているか
といった点を、その都度記録しておくと有益です。
この記録は、後に教育委員会や第三者委員会に説明したり、裁判の対応をする際にも、非常に重要な資料になります。
この章のポイント
- 初動では、感情的に動かずに事実の把握と証拠の確保を優先する
- 子どもから聴き取りをする際には、「いつ」・「どこで」・「誰から」・「何をされたのか」という客観的に子どもが体験した出来事を把握するように努める
- 学校への連絡は、内容を整理したうえで行う
- 学校とのやり取りは、継続的に記録する
2「いじめ防止対策推進法」で学校に課される義務とは
いじめ問題では、学校の対応に期待し続けるだけでは足りません。
重要なのは、学校には法律上どのような義務があるのかを踏まえて、積極的に対応を求めることです。
2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」により、学校には法律上の明確な義務が課されています。保護者として、この法律を理解しておくことは、学校との交渉において非常に重要です。
いじめの法律上の定義
同法第2条では、法律上、いじめは次のように定義されています。
いじめ防止対策推進法 第2条第1項
つまり、被害を受けた子どもが「苦痛を感じている」のであれば、一見すると「おふざけ」や「ケンカ」のように見えても、それは法律上の「いじめ」に該当する可能性があります。そのため、どのような行為がされたことに対して苦痛を感じているかを具体的に把握していくことが重要です。
学校に課される5つの義務
いじめに関する相談や通報を受けた学校には、次のような対応が求められます。
① 事実確認義務
学校は、いじめの疑いがあると認めた場合、速やかに事実関係を確認する必要があります。単に「様子を見る」というだけではなく、関係児童生徒からの聴き取りその他必要な調査を行うべき立場にあります。
② 被害児童生徒への支援義務
学校は、被害児童生徒が安心して教育を受けられるよう、必要な配慮や支援を講じる必要があります。席替え、別室対応、見守り強化など、具体的措置の要否も検討対象となります。
③ 加害児童生徒への指導義務
学校は、加害行為が認められる場合、その行為をやめさせ、必要な指導を行う必要があります。場合によっては保護者への助言や指導も必要となります。
④ 安全確保義務
被害が継続・再発しないよう、学校生活の安全を確保する措置を講じることが求められます。単なる口頭注意にとどまり、再発防止策が実質的に講じられていない場合には、対応として不十分となる可能性があります。
⑤ 情報共有・説明義務
調査の進捗や対応方針について、被害側保護者に対して適切な説明を行うことも重要です。学校側が「個人情報だから説明できない」として一切の情報提供を拒む場面もありますが、何が全く説明できず、何が説明可能かは整理して考える必要があります。
「重大事態」の場合は調査が義務化
いじめにより生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑いがある場合や、相当期間学校を欠席することを余儀なくされている場合(年間30日が目安)は、法律上、「重大事態」と呼ばれることになります。
重大事態に該当した場合、調査を実施する義務を負います。
3証拠の集め方と記録の残し方
いじめ問題では、学校も加害者側も、初期段階では事実関係を十分に把握していないことが少なくありません。
また、いじめの定義が被害者の苦痛を基準に考えられているため、被害者側がどのような行為に苦痛を覚えたのか丁寧に説明しなければ、学校も対応することができません。
そのため、被害側としては、単に「困っている」と伝えるだけでなく、具体的な事実と資料を示せるようにすることが重要です。
証拠の有無は、学校への対応要求、教育委員会への申入れ、重大事態調査の要請、損害賠償請求など、どの局面においても大きな意味を持ちます。
証拠として有効なもの
- 日記・メモ:日付・時間・場所・加害者・具体的な言動を記録
- LINEやSNSのスクリーンショット:悪口や誹謗中傷の証拠として
- 写真:怪我の状態、破損された持ち物、落書きされたノートなど
- 診断書:怪我や精神的な症状の医学的証明
- 第三者の証言:目撃した友人や教師からの聞き取り内容
- 学校との連絡記録:電話の日時・内容、メール、書面のやり取り
記録を残すときのポイント
記録のコツ
- 5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識
- 客観的事実と、子どもの感じたことを分けて記載
- 学校とのやり取りは可能な限り書面やメールで行う
- 電話や面談の場合は、録音するか、すくなくとも終了後すぐに内容をメモする
4学校との話し合いで押さえるべきポイント
学校との話し合いは、いじめの解決の重要なステップです。ただし、感情的になって対立関係を深めてしまうと、かえっていじめの解決に悪影響を及ぼす可能性もあります。
話し合いの前に準備すること
- 事実関係を時系列で整理した資料を用意する
- 学校に求めたいこと(事実確認、加害者への指導、再発防止策など)を明確にする
- 話し合いの内容を記録する手段を用意する(メモ、可能であれば録音)
話し合いで確認すべきこと
- 学校が把握している事実関係
- 今後の調査予定と方法
- 被害者である子どもへの支援内容
- 加害者への指導方針
- 再発防止に向けた具体的な取り組み
- 次回の報告・連絡の時期
避けるべきNG対応
いじめ問題では、保護者が強い怒りから、加害児童生徒やその保護者に直接連絡を取ろうとすることがあります。しかし、これは事実関係を複雑化させ、学校側の調査や今後の交渉に支障を生じさせることがあります。
また、SNS上での発信も慎重であるべきです。
被害を訴えるつもりで投稿した内容が、別の法的紛争を生む可能性もあります。まずは学校を通じた解決を目指し、それが難しい場合に次の手段を検討するのが原則です。
5よくある質問
いじめの証拠はどうやって集める?
LINEやSNSのスクリーンショット、日記への記録(日時・場所・内容)、ケガの写真・診断書、学校との面談記録(録音含む)を残してください。子どもの証言もメモしておくことが重要です。
学校がいじめを認めない場合は?
教育委員会への報告、法務局の人権擁護課への申告、弁護士を通じた学校への書面要求などの方法があります。いじめ防止対策推進法により、学校には調査義務があります。
いじめで転校する場合の手続きは?
教育委員会に相談すれば、いじめを理由とした区域外通学や転校が認められます。転校先の情報が加害者側に漏れないよう配慮を求めることも可能です。
学校トラブルでお困りではありませんか?
いじめ問題は初動対応が重要です。早めにご相談いただくことで、より良い解決につながります。
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6学校が動かない場合の対処法
学校に相談しても十分な対応が得られない事例もあります。「様子を見ましょう」「子ども同士のことですから」と言われて終わり、という経験をお持ちの方も少なくないでしょう。
そのような場合、以下の対応を検討してください。
①教育委員会への相談
公立学校であれば、学校の設置者である教育委員会に相談することができます。学校の対応状況を伝え、適切な指導を求めましょう。
②警察への相談・被害届の提出
暴行、傷害、恐喝、脅迫など、いじめが犯罪行為に該当する場合は、警察への相談も選択肢に入ります。いじめ防止対策推進法でも、犯罪行為に該当するいじめについては学校と警察の連携が求められています。
③弁護士への相談
どのように学校と交渉をすればいいかわからない、学校の対応が不十分である、重大事態該当性が問題となる、加害側との示談や損害賠償が視野に入るといった場合には、早めに弁護士へ相談することが有益です。
いじめ問題では、「今すぐ訴訟をしたい」という話ではなくても、学校への申入れの仕方、主張の整理、記録化、法的見通しの確認など、あらゆる段階で早期相談に実益があります。
7弁護士に相談すべきケースとは
すべてのいじめ問題で弁護士が必要というわけではありませんが、以下のようなケースでは早めの相談をおすすめします。
弁護士への相談を検討すべきケース
- どのように学校に相談をすればいいかわからない
- 学校に相談しても適切な対応がなされない、重大事態として取り扱ってもらえない
- 子どもの体調が悪化している、医療機関に通院している
- いじめにより子どもが不登校や転校を検討している状況になっている
- 暴行・傷害など犯罪行為を伴ういじめを受けている
- 損害賠償請求を検討している
- 重大事態として調査委員会が設置された(またはされるべき状況)
- SNSでの誹謗中傷が続いており、投稿者を特定したい
- 学校との関係が対立化し、保護者だけでの対応が難しい
弁護士に依頼するメリット
- 法的観点から論点を整理できる
いじめの事実認定、学校の安全配慮上の問題、重大事態該当性、加害側への請求可能性などを整理できます。 - 学校との交渉窓口を一元化できる
保護者が直接やり取りを続けると感情的対立が深まることがありますが、弁護士が窓口に立つことで、主張と要求事項を整理した形で対応できます。 - 証拠化の精度を高められること
何を、どの順番で、どの程度まで残すべきかについて助言を受けられます。SNS事案では、発信者情報開示請求等の法的手段が問題となることもあります。 - 法的手続きを視野に入れた対応ができること
治療費、通院交通費、慰謝料、転校に伴う費用など、具体的にどのような損害が法的評価に乗りうるかを検討できます。 - 学校との面談等への関与が可能であること
学校側との面談前に論点整理を行ったり、文書で申入れを行ったりすることで、対応の質が変わることがあります。
8まとめ:子どもを守るために親ができること
子どもがいじめに遭ったとき、親として最も大切なのは、慌てて場当たり的に対応するのではなく、事実関係を正確に把握し、証拠を確保し、学校に対して適切な対応を求める準備を整えることです。
- 事実を整理し、記録を残す
- 学校に通報し、法律に基づく対応を求める
- 学校が動かない場合は、教育委員会や弁護士など外部の力を借りる
という流れで、冷静に、しかし毅然と対応していくことが重要です。
いじめの問題は、初動の段階で方針を誤ると、学校対応が曖昧なまま長期化し、被害回復がより難しくなることがあります。
逆に、初期段階から記録と主張を整理し、必要に応じて専門家の助力を得ることで、解決の見通しが大きく変わることもあります。
不安や怒りの強い局面だからこそ、保護者だけで抱え込まず、早めに弁護士に相談することを検討してください。
この記事のまとめ
- 初動では、感情的対応よりも事実整理と証拠確保を優先する
- 学校への連絡は、内容と方法を整理したうえで行うべきである
- 学校には、いじめ防止対策推進法に基づく調査・支援・安全確保等の義務がある
- 学校対応が不十分な場合は、教育委員会、警察、弁護士等の外部対応を検討する
- 不登校、重大事態、犯罪性のある事案、損害賠償を視野に入れる事案では、早期の弁護士相談が有益である
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